街なかの水辺を歩く。くまもとオアシス散策
熊本市を代表する観光地といえば、熊本城と水前寺成趣園(通称・水前寺公園)だろう。本丸御殿公開以来、「一口城主制度」で募金する人まで増えている熊本城。当然水前寺公園とのセット観光も多いはず。そして水前寺公園とは電車通りを挟んで反対エリアにあるのが、市民の憩いの場・江津湖だ。
昔、水前寺公園を訪れた時はなんとも思わなかったが、細川忠利公より三代にわたり築造された桃山式の回遊庭園は優美で、鯉が泳ぐただの池だと思っていたものが、底から湧く澄んだ水で満たされていることに今さら気付き、驚いた(汗)。不思議なもので、遠くに見えるビルと時代を越えて対比する景色とのコラボレーションは、庭園の優美さを一層際立たせていた。
午前中は、日本赤十字の発祥地でもある熊本洋学校教師ジェーンズ邸を含めて散策した。
散策の前日、江津湖の近所に住む知人に見どころを尋ねた。「ホタルも野鳥もおるバイ」「湧水の池が天然プール(←贅沢)」のほか、「カメラを構えたおじさんが群がる場所があるけん」なんていう情報までもらった。「見どころなんか無かバイ」と言いつつも、ちょっと自慢げに話してくれた。
江津湖は上江津湖と下江津湖から成る。県立図書館裏から上江津湖への遊歩道を歩いていると、芭蕉の原生林の手前あたりで異様な空間を発見。それこそが「おじさんが群がる場所」だった・・・。野鳥か何かを撮影しているのか。声をかけてはいけない空気が流れていたため(笑)、そのままその場を後にした。
こんな街なかにあって1日40万トンの湧水量を誇り、その「豊かな水に絶滅危惧種を含む貴重な動植物が生息している」なんていう奇跡。
生活環境の変化で湖の自然の変化が問題になっているものの、美化運動が盛んになってからは少しずつ環境が戻ってきていると伝え聞く。街なかのオアシスがいつまでもオアシスであるためには、自分たちの手で守るしかない。
休日ののどかな昼下がり。晴れた日のテクテク散策は暑かったけど、散策後に路面電車で街まで戻り、日のあるうちからグイッと一杯やって、早めに家路に着いてゴロン。これがたまらなく至福のひとときだったことを付け加えておこう。あなたもどうでしょう、初夏の街なか水辺散策。その時は、水と日傘と扇子を忘れぬように。
(2009年6月1日時の記事です)
●この日は4月中旬の快晴日。えらい日焼けして帰った記憶あり(汗)。水前寺公園「古今伝授之間」は、この後から2010年秋まで解体修復工事で休業予定でした。そのため写真を載せることなく・・・。こちらでいただくお抹茶の和菓子は、今も「十六夜」かしら。「加勢以多」もお気に入りです(食い気全開ですみません)。
(文・写真・マップ/山口 文子)
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