営業時間は1日4時間弱。知られざる泥湯の名湯
別府地獄めぐりのひとつ、坊主地獄にある泥湯の温泉です。営業時間は午前中の4時間弱だけ。これは営業を終えるごとに99度の源泉を浴槽に注ぎ入れ、湯を殺菌するためです。
建物は簡素で木造の湯小屋という感じ。浴槽は2つあり、無色透明の熱めの湯で満たされた大きな露天風呂、その奥に6、7人が定員の鉱泥湯(灰色の泥湯)があります。鉱泥湯の泥はサラッとした肌ざわり。まるで一分立ての生クリームのようです。
脱衣所に「鉱泥湯は非常に効果がすぐれているので入浴時間は1日5~7分が最適。それ以上は疲れが出て逆効果です」との顧問医師の注意書きがあります。しかし、800円払って5分で帰るのはちょっともったいない。そこで入浴客のほとんどが採用している入湯法は…。
鉱泥湯に5分ほど浸かる。 → 鉱泥湯を流すことなく、洗い場や休憩小屋で10~20分ほどしばし佇む。→ 再び鉱泥湯へ。これを3、4セット繰り返す。無色透明の大露天の湯は最後に体を流すときにだけ使われているようです。
泥湯は腰痛、肩こり、関節痛などの症状を和らげる、鎮痛効果のある温泉と言われています。これは以下のメカニズムによるものです。
① 泥湯に含まれる硫黄、塩類などのミネラル成分の効果により、体中に熱が運ばれやすくなり、体が芯から温まる。
② その結果、泥湯から出たあとも血流の増えた状態が続く。
③ 血流が増えたことで、痛むところに局在している発痛物質(ブラジキニン)が洗い流される。
それならば硫黄泉、塩泉に入るのと同じことなのでは?との疑問がわくかもしれませんが、さにあらず。普通の温泉と泥湯の大きな違いがひとつある。それは同じ湯の温度ならば、人間は泥湯の方が長く入っていられる、という点です。泥は熱の伝導率が低く皮膚に対しての刺激もやわらかい。つまり体への温度の伝わり方が遅いのです。よって長時間かけて発痛物質を減らすことができるというわけ。
但し、くれぐれも無理は禁物です。欲張って必要以上に長湯をすると、湯上がりに疲労困憊して足元も覚束ない。そんな私のような状態になりかねませんので…。
鉱泥温泉
℡0977-66-0863
大分県別府市小倉6組
800円 木曜・元日定休
(営)8時15分~12時
取材・文/緒方渉午